企業法務の頭の中

企業法務を中心に実務目線で法律の基礎知識をまとめるブログ。一般民事弁護士から企業に転身した法務部員の頭の中を公開します。

司法試験に合格する勉強法

弁護士を含め、法律実務家になるには、まず司法試験に合格する必要があり、司法試験で要求された内容は今も実務で要求され続けているように感じます。そこで、本記事では原点である司法試験に関して整理してみました。

 

1 司法試験ってどんな試験?

1 司法試験法からの分析

⑴ 試験目的

司法試験法1条1個は試験目的について以下であることを明示しております

・法曹を目指す者として必要な能力を備えているかを判定する試験 

合格するためには、法曹を目指す者として必要な能力を備えることが必要

⑵ 司法試験が求める能力(法曹を目指す者として必要な能力)

司法試験法は3条で司法試験で求める能力等について下記のとおり明記しております。

・ 短答式:専門的な法律知識(憲民刑)及び法的な推論の能力

論文式:専門的な学識(基本7法+選択)及び法的な分析・構成・論述の能力

・採点方針:知識を有するかの判定に偏らず、理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いる。

これらをまとめますとのが下記の図のようになります。

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2 試験問題の分析

【前提:司法試験問題とは司法試験法第3条を具体化したものである】

そうしますと、試験問題は司法試験法3条から以下のように整理されます。

⑴ 短答式試験法的な基礎知識とそれを前提として推論の能力を問う

  ☛設問の意図はたったの2つ

   ①この条文・判例・論点を知っているよね?

      ②こうした前提に立てばこのようになると推論できるよね?

⑵ 論文式:法的な学識とそれを前提とした論理力を問う

       ☛設問の意図はたったの2つ(細かく分けると5つ)

     ①設問の事案が~~という法的知識に関する問題と判断できるよね?

      …「基礎的法律知識」と「論点抽出能力/争点整理能力」あるよね?

     ②本件を法的三段論法に則って処理できるよね?

      …「事案分析能力」「構成力」「論述力/論理的表現力」あるよね?

☛司法試験問題は

法曹として求められる学識や論理力とは具体的にこのようなものである」

という試験官からのメッセージです。

 

2 合格するためにはどうすればいいの?

1 自分と合格ラインの距離を知る

 ⑴ 点数的な距離を知る(短答75%,論文50%がとれるかが一応の目安)

   ①通知された結果を踏まえ、どの科目であと何点必要であったのかを分析する

   ②複数回落ちている場合は比較をし、傾向を見定める

 ⑵ 能力的な距離を知る       

   ①短答式

    ・知識で間違えた問題が多いのか、推論を誤って間違えた問題が多いのか?

   ②論文式

    ・出題の趣旨の「~~を問う問題である」の「~~」を外していないか?

    ・論点は押えていたが、うまく論じられなかった事実誤認をした、

     規範と該当事実がずれた、あてはめで事実評価ができなかった等)のか?

    ③上記①②より必要なのが「学識」か「論理力」かどの程度かを捉える

     ★ 「 学識」は科目毎に個別(科目毎の学習で身に着けるしかない)

         論理力」は全科目に共通(他の科目の学習からも習得できる)

 ⑶ ⑴⑵を踏まえ、試験までの各科目の学習量の比重を決定する。

 

2  効率的に能力を獲得する 【Point:時間は有限、枝葉に拘らず「幹を太くする」ことに注力する】 

⑴「学識」の獲得

①薄い基本書(1科目1冊に留める):目次から法の構造を押える、制度の趣旨を押える

判例集(百選で十分):どのような事案で何が論点になるのかを押える

③司法試験過去問(予備試験、旧試験も可)+出題の趣旨

④論点表:論点の法体系上の位置を意識して目を通す。頻出論点なのに分からないものは要注意。

「採点方針:知識を有するかの判定に偏らず」を忘れて細かい知識を追い求めると黄信号です。論点は論点単独でなく、法体系上の位置付けや条文・文言と紐付けて押えなければなりません。

⑵「論理力」の獲得

判例集(百選で十分) :規範と事案の概要における個々の事実の対応関係・評価に目を向ける

②司法試験過去問(予備試験、旧試験も可)+出題の趣旨+採点実感+優秀答案

   ※論文式過去問は、優秀答案を読む前に出題の趣旨と採点実感を読む。音読・写経も有効です。 ゴールイメージという点では、一審判決全文もよいサンプルになります。但し時間がかかるので、少数に留めじっくり読むのにとどめましょう。

3 その他

実力があっても本番で発揮できなければ意味がありません。下記の点も心掛けて訓練しましょう。

①体力勝負・健康維持

②本番慣れ(模試は、本番の会場を使うものを受ける)

③書く速度を上げる