企業法務の頭の中

企業法務を中心に実務目線で法律の基礎知識をまとめるブログ。一般民事弁護士から企業に転身した法務部員の頭の中を公開します。

労働法~働き方改革法案~

第1 働き方改革について

  1 概要

    働き方改革とは、「一億総活躍社会」を実現するため、非正規雇用労働者の処遇改善や

   長時間労働の是正など、労働制度の抜本的な改革を行うもの。

 2 目的

   アベノミクス新3本の矢実現を実現する社会的基盤となる労働制度の構築。

   一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」と位置づけられている。

   →(要は)国家全体の生産力の維持・向上=労働人口の確保×生産効率の向上

3 備考

   上記は経済政策であるが、経済界および労働組合双方とも反発も強い状況が続いていた。

   しかしながら、電通事件(第2)以降、風向きが変わり、行政の声は大きくなり、

   労使ともに反発を唱えないないしは唱えてもささやかな内容にとどまるようになった。

   ※健康・生命という錦の御旗の利用

   

第2 働き方改革法案法案の概要

 1 目的

   ①長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方

   ②正規雇用(無期フルタイム)と非正規雇用(有期・パートタイム)との待遇改善

    ※同一労働同一賃金

 2 手段

   ①関係

    ・時間外労働の上限規制(義務、違反は刑事罰につながる)

    ・高度プロフェッショナル制度(任意導入)

    ・勤務時間インターバル制度(努力義務)

   ②関係

    ・同一労働同一賃金(労働契約法、パートタイム労働法の見直し)

     →同一労働同一賃金ガイドライン

    ・非正規雇用への説明義務強化

 

 

 

 

 

第3 各施策について

 1 時間外労働上限規制について

  (ポイント)

   ①従前は36協定で定めた範囲内であれば、上限規制はなかった。

    →36協定があっても下記を超えてはならない、超えたら刑事罰可能性あり。

     ・1月:100時間

     ・2~6月平均:80時間

     ・年間:720時間&12ヶ月のうち45時間OVERが6ヶ月以内

   ②ペナルティが重くなったため、従前以上に労働時間管理の重要性が向上

    →過少申告/サービス残業対策が企業の課題になる。

 

 2 高度プロフェッショナル制度 (※ホワイトカラー・エグゼンプション

   制度の概要:下記URL

http://yakyusoku.com/wp-content/uploads/2018/05/ejl5F9Z.jpg

  (ポイント)

   ①従前は、裁量労働管理監督者休日労働や深夜労働の割増手当ての対象と解されており、

    休日・深夜の賃金割増の適用除外はいない状態

    →高度プロフェッショナル制度は、休日・深夜の賃金割増の適用除外となる。

   ②労働時間管理の緩和は、健康管理と逆行しかねない

    →健康確保措置:年間104日以上の休暇、インターバル措置

            1月又は3月の在社時間等の上限措置2週間連続の休日確保措置

            臨時の健康診断 (健康管理時間がつき時間外労働月100時間相当)

 

 3 同一労働同一賃金

   無期・有期、フルタイム・パートタイム間の不合理な賃金格差の是正

  (ポイント)

   ①無期フルタイム同士での賃金差異の是正ではない。

   ②不合理であってはならないのであって、合理的でなければならないわけではない。

   ③不合理であるかの判断について

    ・賃金項目ごとに目的効果基準で判断

    ・賃金項目間で関連性があるものについてはまとめてひとつのものと扱う

    ・食事、交通、安全に関するものは不合理とされやすい(雇用形態と関連が説明しづらい)